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磐田物語 / 磐南IIバイパスと沿岸道路網の完成
磐田共通 | 道路史・都市計画

磐南IIバイパスと沿岸道路網の完成 ──
内陸と海岸、二つの東西動脈

磐田市の道路といえば、内陸を走る磐田バイパス(国道1号)がまず思い浮かぶ。しかし2026年3月、市の南部・沿岸寄りを走る国道150号にも、新しいバイパスが完成した。「磐南IIバイパス」である。

2026年3月22日、新しい道が開通した

令和8年(2026年)3月22日、磐田市鮫島から南田伊兵衛新田にかけての区間で、国道150号「磐南II(ばんなんに)バイパス」が開通した。当日は午前10時30分から開通式が行われ、供用開始は同日15時からだったと伝わる。この磐南IIバイパスは、平成19年(2007年)に完成した「磐南バイパス」の東伸区間として計画されたもので、磐田市塩新田から鮫島にかけての延長2.0キロメートルのうち、優先的に整備が進められてきた西側の1.3キロメートルが、今回の開通区間にあたる。

「川越え迂回」に悩まされてきた、福田工業団地

磐南IIバイパスが整備された背景には、沿岸部に立地する「福田工業団地」と呼ばれる工場群の交通事情があった。これらの工場が主要道路である国道150号に合流するためには、東西に流れる「ぼう僧川」を越える必要があり、既存のルートでは遠回りを強いられていたと伝えられる。磐南IIバイパスは、国道150号と直結する新しい道路であるだけでなく、この川を渡るための新しい橋梁も備えており、工業団地から幹線道路へのアクセスを、より直接的でスムーズなものに変えることが期待されている。

確認できること・できないこと
磐南IIバイパスの開通日・区間・延長・目的は、静岡県公式発表等の複数の情報源で確認できる。一方、ぼう僧川の橋梁の正式名称や、工業団地の詳細な立地企業数等については、今回のWeb調査の範囲では確認できていない。

歩行者の安全にも配慮した、新しい道づくり

磐南IIバイパスの整備目的は、物流の効率化だけにとどまらない。既存の国道150号沿いには「人家連坦地区の歩道狭小区間」、すなわち住宅が連なる区間で歩道が著しく狭いという課題があったとされる。新しいバイパスの整備にあたっては、こうした歩行者の安全面にも配慮した道づくりが進められたと伝えられており、単なる通過交通の分離だけでなく、沿線に暮らす人々の生活環境の改善も、あわせて目指されている。

内陸の国道1号、沿岸の国道150号 ── 二つの東西動脈

磐田物語の別稿(旧東海道と国道1号・県道の主役交代)で扱ったとおり、磐田市の内陸部には、平成27年(2015年)に本線へ昇格した磐田バイパス(国道1号)という東西の大動脈がある。磐南IIバイパスの開通によって、これと並行する形で、市の南部・沿岸寄りにも国道150号という、もう一本の東西軸が強化されたことになる。内陸と沿岸、性格の異なる二本の東西動脈が磐田市域に存在することは、産業物流の経路を多重化するだけでなく、地震や水害といった大規模災害の際に、一方の道が使えなくなっても、もう一方を緊急輸送路として活用できるという、防災上のレジリエンス(強靭性)の向上にもつながっている。

山間部の道路整備との対比

磐田市のような平野部の道路整備が、比較的計画通りに進みやすいことは、同じ静岡県内の山間部を通る道路整備の困難さと比較すると、より鮮明になる。例えば、県内の三遠南信自動車道(国道474号)では、草木トンネルの建設後に、兵越峠の直下で地盤の脆弱性が判明し、大幅なルート変更や一般道への格下げを余儀なくされた歴史があると伝えられる。山を貫くトンネルや橋梁は、着工してみて初めて分かる地質上のリスクを抱えることが少なくない。これに対し、磐田市のように平野部に位置し、地盤の条件が比較的安定した地域では、計画された事業を段階的かつ着実に完遂しやすいという違いがある。磐南IIバイパスや磐田バイパスの4車線化が、当初の計画からおおむね予定通りに完了してきたことも、こうした平野部特有の条件に支えられている面があるといえるだろう。

平野の道づくりが積み重ねてきたもの

磐田バイパスの4車線化(2013年完了)、御厨駅を核とした区画整理と自由通路の建設(2020年開業)、そして磐南IIバイパスの開通(2026年)――近年の磐田市の道路史を並べてみると、平野部という地の利を生かしながら、段階的かつ着実に道路網を強化してきた歩みが見えてくる。急峻な山間部での道路整備が、地盤の脆弱性など予期せぬ困難に直面することがあるのとは対照的に、平野部に位置する磐田市の道路整備は、計画された通りに一つ一つの事業を積み上げてきた点に特徴があるといえるだろう。

「磐南」という名前が示す地域性

「磐南(ばんなん)」という名称は、磐田市南部の地域を指す通称として、この一帯の道路・水利事業の名称にたびたび用いられてきた。磐田物語の別稿(磐田の水争いと村の共同体)で触れた磐南平野は、かつて沼や潟湖が広がる低湿地であり、水との闘いの歴史を持つ土地である。磐南バイパス・磐南IIバイパスという道路名にも、この磐田市南部・沿岸寄りの地域という土地の性格が、そのまま反映されている。水を治めることから始まった磐南平野の近代化の歴史は、令和の時代になって、道路網の整備という形でもう一つの段階を迎えたといえるだろう。

磐南IIバイパス開通令和8年(2026年)3月22日、磐田市鮫島〜南田伊兵衛新田間の1.3km区間
位置づけ2007年完成の磐南バイパスの東伸区間(計画延長2.0km)
整備の目的福田工業団地のアクセス改善(ぼう僧川の迂回解消)、歩道狭小区間の解消
広域的な意味内陸の国道1号(磐田バイパス)と沿岸の国道150号、二つの東西動脈の完成

主な参考資料

本記事は、上記資料を参考にしつつ、磐田物語の編集方針に基づいて独自に再構成したものである。橋梁の正式名称等の詳細は今回のWeb調査では確認できておらず、本文中で確認できた点とできない点を区別して記している。

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この記事について

著者
大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/磐田物語 運営者)
参考資料
佐口行正氏所蔵資料、磐田市・静岡県等の公開資料、現地確認、郷土史関連資料を参考にしています。記事ごとに主要な参考資料がある場合は、個別に追記してください。
作成方針
本記事は、資料の文章をそのまま転載するのではなく、史実・地名・地理・時代背景を確認しながら、読みやすい地域史コンテンツとして再構成しています。誤りや補足情報がある場合は、運営者までお知らせください。