二十町の山車
中泉型二輪と四輪、年番と「渡し」
府八幡宮例大祭の山車は、中泉の二十町がそれぞれ曳く。二輪と四輪が混在し、年番、地番、渡しといった町内自治の仕組みが、祭りの秩序を支えている。
二十町の山車一覧
| 年番順 | 町内 | 組名 | 形式 | 主な特徴・彫刻・人形 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 久保町 | 王塵社 | 四輪・二層大唐破風 | 上下スライド式上山。漆塗りの金具。彫刻「天の岩戸」「加藤清正」、人形「神武天皇」。平成10年製作。 |
| 2 | 西町 | 西組 | 四輪・二重大唐破風 | 大正9〜10年。総彫りの金具。彫刻「曽我義仲」「天照大神」。 |
| 3 | 東町 | 東組 | 三輪(二輪系統) | 総檜木・総彫り。明治後期。彫刻「源義経」「常盤御前」、人形「素戔嗚尊」。 |
| 4 | 天王町 | 騰蛟社 | 二輪 | 白木・総彫り。大正6年。見送り「龍」、欄干の滝彫り。 |
| 5 | 中町 | 鳳輦車 | 二輪 | 白木。大正8年以前。彫刻「源平合戦」「曽我義仲」、幕「桜」。 |
| 6 | 西新町 | 志組 | 四輪・二層大唐破風 | 上下スライド式。本仕立漆塗り。大正10年。彫刻「梅太郎」「神功皇后」。 |
| 7 | 塩上町 | 志組社 | 四輪・二重大唐破風 | 上下引き分けスライド。三枚の極彩色。昭和42年。アセチレンガス照明。 |
| 8 | 石原町 | 石湊社 | 四輪・大唐破風 | 昭和4年。彫刻「斎藤温公」「加藤清正」、見送り「波に鶴」。 |
| 9 | 田町 | 盛友社 | 四輪・大唐破風一層 | アセチレンガス照明が特徴。 |
| 10 | 栄町 | 新栄社 | 四輪・大唐破風 | 大正期終盤の「新道」を起源とする。 |
| 11 | 中央町 | 宮本 | 四輪・大唐破風 | 久保町から分かれた組。神事を重視する伝統。 |
| 12 | 御殿 | 御殿 | 四輪・二重大唐破風 | 東照宮を崇敬する氏子地域。 |
| 13 | 桜ヶ丘 | 鳳翔社 | 四輪・大唐破風 | 大唐破風前一層部分屋根。 |
| 14 | 泉町 | 泉湧社 | 四輪・二重大唐破風 | 大唐破風車屋根入り母屋造り二層屋根。 |
| 15 | 旭ヶ丘 | 旭祥社 | 四輪・大唐破風 | 屋根上に人形2体と人間1人が乗る特異な構成。 |
| 16 | 大泉町 | 大泉 | 四輪・大唐破風一層 | 大唐破風一層屋根。 |
| 17 | 本町 | 本町 | 情報不足 | 昭和29年以降に年番組へ加入した新興組。 |
| 18 | 二之宮南 | み組 | 情報不足 | 同上。 |
| 19 | 二之宮北 | ほ組よいしょ | 情報不足 | 同上。 |
| 20 | 京見塚 | 高根社 | 情報不足 | 同上。 |
年番・地番・渡し
年番。 持ち回りで祭礼の実行委員長役を担う制度である。運行ルート、神社先導、全体調整に関わる。
地番。 各町には固有の区域があり、山車が入るときには相手町への礼を必要とする。
渡し。 他町の山車が進入する際、使者が会所へ出向いて経路や停止位置を交渉する。町の独立と協調を認め合う仕組みである。
山車はどのように祭りへ加わったか。 府八幡宮編・発行『府八幡宮ものがたり』は、神事芸能から風流の出し物、練り物、山車へ展開した祭礼史を概説する。室町期の都市民が祭りへ直接参加するようになり、江戸時代中期頃から若者が娯楽部門を担って出し物を作った。遠州では横須賀を早い例として掛塚・森・山梨へ広がり、中泉で屋台が曳かれるようになったのは江戸後期と冊子は推定する。
これは地域の山車文化を結ぶ見取り図であり、各山車の創建年代を直接証明するものではない。各町の棟木銘、制作帳、修理記録、彫師・大工の記録を一台ずつ確認する必要がある。
一台を動かす町内組織
大老・中老・世話係。 意見役、安全・警護、山車管理、祭礼行事への参加を分担する。
総務・会計・書記。 届出、注文、会計帳簿、寄付、議事録を管理する。
外交・進行・各係。 他町交渉、振鈴による運行、子どもの安全、電線・樹木・雨天対応を担う。
山車は「曳く人」と「囃す人」だけで動くのではない。交渉、警備、食事、照明、会計、子どもの参加までを町内が引き受ける移動する組織である。
八朔集会から引廻しへ。 冊子によれば、旧暦8月1日の八朔に祭支度を始めたことから、月遅れの9月1日に年番町主催の「八朔集会」を開き、祭典余興を協議していた。前夜祭では会所を開き、参加町への表敬訪問、お宮詣り、町内中心の引廻しを行う。
初日・二日目は町内廻りと他町訪問を行い、夕方から団体行動へ移る。進路は外交会で決め、山車の振鈴を合図に各係が安全を確保する。冊子は山車上の寸劇や掛け声も紹介するが、地域ごとに語形が変化した可能性を指摘している。
史料としての山車一覧。 上の表は複数資料を統合した既存ページの一覧である。今回参照した冊子38〜39頁の「山車一覧表」は16町を掲げ、呼び名・制作年に不確定記号を含む。20町の現在的枠組み、冊子刊行時の山車保有町、各台の制作時点を同じ表として固定せず、更新可能な目録として扱う。
参考資料・更新履歴。 府八幡宮編・発行『府八幡宮ものがたり』2007年10月1日、35〜41頁。2026年7月31日、山車の成立史、町内役職、八朔集会・引廻し、一覧の年代的注意を増補した。